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玉掛けとは│安全に作業するための道具一覧

玉掛けとは│安全に作業するための道具一覧

玉掛けは、工場や建築現場などで重量物をクレーンで移動させる際に、フックや紐に荷物を掛けたり外したりする作業です。正しい知識を付けて作業を行わないと、重量物が落下して作業員が大けがをしたり死亡事故に繋がる恐れがありますので注意が必要です。こちらの豆知識では、玉掛け作業の基本から安全な玉掛け作業に必要な道具と種類までご紹介しています。

玉掛けとは

玉掛けとは、重い荷物をクレーンで持ち上げて移動させる際に、フックやワイヤーを使用して荷物を掛けたり、外したりする作業です。重量物が落下してしまうと大きな事故に繋がりますので、クレーンで持ち上げた時の角度やバランスなど、正しい知識に基づいて作業する必要があります。

そのため重さ1t以上の荷物を扱う場合は、「玉掛け技能講習」を受けた人が行わなければなりません。1t未満の場合は、資格の取得は必須ではありませんが、「玉掛け技能教育」を履修していることが望ましいとされています。

玉掛け作業は、工場や建築現場の従業員が行いますが、クレーンの運転者がそのまま任されるケースも多いです。そのため、クレーンの運転と玉掛け作業の資格を両方取得して、1人で作業を完結させている人もいます。

玉掛けの方法

玉掛けの作業は、クレーンに付いているフックに荷物を縛ったスリングを掛ける方法か、フックに結び付けたスリングに荷物を掛ける方法の2通りがあります。またその中でも、目掛け、半掛けなど種類がさまざまあり、吊り角度やスリングの本数なども含めると1000通り以上の方法があります。運ぶ荷物や用途に合わせて使い分けてください。

スリングとは

吊り作業に使用される道具「ワイヤーロープ」「繊維ベルト」「チェーン」をスリングと呼びます。こちらの豆知識では、荷物を吊り上げる紐状の道具を総じて「スリング」と表記しています。

フックに荷物を縛ったスリングをかける方法

フックに荷物を縛ったスリングをかける方法は、一般的に使用されている方法です。「目掛け」「半掛け」「あだ巻き掛け」「肩掛け」などがあります。

目掛け(アイ掛け)

目掛けはクレーンのフックにスリングの輪っかとなる部分(アイ)を掛ける方法で、もっとも標準的な掛け方です。ロープのアイ部分ではなく、リングを利用して掛けられている場合もあります。

スリングの本数によって「2本掛け(2本吊り)」「3本掛け(3本吊り)」「4本掛け(4本吊り)」と呼ばれています。安全性が高いつり方ですが、荷物が非対称の場合は、適用が難しくなります。目掛けで偏荷重のものを吊り上げる際には、長さ調節機能が付いたスリングをご利用ください。


半掛け

半掛けは、スリングの中心部をクレーンのフックに掛ける方法です。紐(ロープ)の数によって、「2本吊り」「4本吊り」「6本吊り」などがあります。

偏荷重の荷物を吊り上げる際に、スリングの長さの調節が可能であるため使用されています。しかし、スリングの張力が平等にかからないと、ベルトスリングが滑りやすいため注意が必要です。荷物の重心が中心にない場合や、重心の位置が高い場合は、利用を避けてください。


あだ巻き掛け

あだ巻き掛けは、クレーンのフックにスリングを1回巻き付けて掛ける方法です。1~4本吊りがあり、4本以上はロープの面積が増えてフックに掛けられなくなるため、利用されていません。

半掛けと似ていますが、スリングを1回転させることで滑りを防止できるため、多少荷物の重心が中心でない場合や、重心が高い場合でも対応できます。また、スリングの長さを調節することも可能です。

フック上でスリングが重なっていると摩耗・破損の原因となりますので、注意する必要があります。またスリングに癖が付き、修正が必要となります。太いワイヤーの場合は、曲げづらく癖も付きやすいためあまり適していません。


肩掛け

肩掛けは、フックの”肩”の部分にスリングを直接巻き付けて、荷物を引っ掛ける方法です。重心が中心にあり安定している荷物の場合に、簡単な方法として用いられることが多いです。スリングの本数は基本的には1本だけで、2本以上かけることはほとんどありません。

あだ巻き掛けと比較して、ロープを巻く場所がフックよりも太くなるため、太いロープでも巻きやすく、ロープに巻いた後の癖もつきにくくなります。しかし、フックの形状によっては、対応できないものもありますので、購入前などに確認しておく必要があります。


フックに付いたスリングを荷物にかける方法

フックに付いたスリングを荷物にかける方法には、「目掛け」「半掛け」「目通し」「あだ巻き掛け」があります。

目掛け(アイ掛け)

目掛けは、荷物に付いている吊り金具などにスリングの輪っか部分(アイ)を掛ける方法です。バランスの取れた荷物に適しており、簡単に作業を進めることができます。

しかし、ワイヤーロープが緩むと荷物が落下する危険性がありますので、重心が偏っている荷物には向いていません。吊り金具が付いている運搬箱の場合でも、中身の重量が偏っていれば、傾く可能性がありますので注意が必要です。


半掛け

半掛けは、スリングを荷物の下に回して掛ける吊り方です。スリングを荷物に掛ける方法の中でもっとも標準的で、広く用いられています。

重心が偏っている荷物を吊るしたり、荷振れや接触などによってスリングが滑り、落下事故に繋がる恐れがありますので、注意が必要です。またつり角度が大きくなるとワイヤーロープが互いに引き寄せられて滑りやすくなりますので、当て物で滑らないようにするなど、工夫が必要です。


目通し

目通しは、スリングの輪っか(アイ)や金具にスリングを通して絞った状態で吊る方法で、「チョーク吊り」や「絞り吊り」ともいいます。荷物が絞りこまれることで、スリングの滑りを防止することができたり、複数の長尺物をひとくくりにすることができます。

1本のスリングで吊ると荷物が回転しやすいため、2本以上で吊るす方が好ましいです。2本で吊る際にも、荷物が回転したりねじれたりしないよう方向に気を付ける必要があります。

荷物の安定感が高い吊り方ですが、スリングの絞られた場所に大きな張力がかかり、摩耗で低下する恐れがありますので、スリングが劣化している場合はすぐに交換してください。また、シャックルを使用する場合は、絞り側にボルトがこないよう向きに注意してください。

ワイヤーロープを使用する場合は、荷物の周りに余裕を持たせた「浅絞り」を使用します。ワイヤーロープは、曲がりが強くなると癖がつきやすく、破断の原因にもなるからです。

繊維スリングを使用する場合は荷物にしっかり巻き付ける「深絞り」を利用します。繊維スリングは摩擦力が弱いため、締め付けが弱いと荷物がずれてしまう可能性があります。強度を上げて落下を防ぐには、しっかりと深絞りで吊るす必要があります。


あだ巻き掛け

あだ巻き掛けは、荷物にスリングを1回巻き付けてて吊るす方法です。内側に引き寄せようとする力を防止できますので、長尺物の荷物に最適です。

荷物を掛ける際も外す際も手間が発生しますので、作業が複雑となる点がデメリットです。また、スリング同士が重なり合って摩耗しないように注意する必要があります。


くくり吊り

くくり吊りは、1本のスリングを押し返して吊るす方法です。スリングを折り返して輪っか(アイ)に折り返し部分を通す、折り返し部分にアイを通す、エンドレスワイヤーロープを使用する、の3通りの方法があります。


おすすめしない吊り下げ方法

円柱のように底面が円形の吊り荷に2本のワイヤロープを荷の底面で交差させて掛ける方法は「あや掛け」と呼ばれています。ワイヤーロープの交差部分が劣化して強度が低下しやすいことと、重心が高い荷物は不安定になることから、あまり推奨されていません。

また1本吊りも荷物が不安定で、ワイヤーロープの撚りが戻ろうとする力により回転してしまうため、非常に危険です。原則として1本吊りは使用しないようにしてください。


玉掛け用具の種類

玉掛け作業には、荷物を吊るすための紐であるスリングや連結金具が使用されています。それぞれに特徴がありますので、最適な玉掛け用具をお選びください。

スリング

玉掛け作業におけるスリングとは、荷物を吊り上げるための強度が高い紐状の道具です。主にワイヤーロープ、ベルトスリング、チェーンスリングが利用されており、それぞれに使用荷重が定められています。

ワイヤーロープ


スリングの中で最も使用されているのがワイヤーロープです。ワイヤーロープは鋼鉄線でできており、強度が高いのが特徴です。その一方で、扱い方によっては形ぐずれ(キンク)を起こして破損したり、錆びによって腐食する可能性もありますので、注意が必要です。

ワイヤーロープは、ストランドという更に細い素線がより合わさってできており、ストランドの本数や、撚り方によって強度が異なります。
ワイヤーロープの種類についてはこちらをご覧ください。

ワイヤーロープの安全係数は、クレーン等安全規則の第213条により「6以上」でなければならないとされています。また同規則でエンドレスでないワイヤーロープに関して、「両端にフック、シャックル、リングまたはアイを備えたものでなければならない」と義務付けられているため、ワイヤーロープの両端は、輪っか(アイ)状になっているか、後述する連結金具が取り付けられています。

ベルトスリング(繊維スリング)


ベルトスリングは、合繊繊維でできた平らなベルト状の紐です。軽量で柔軟性に優れ扱いやすいため、頻繁に掛け外しする用途に最適です。

金属のように錆びる心配はありませんが、鋭利なものに引っかかって傷が付くと裂けてしまう可能性があります。

チェーンスリング


チェーンスリングは、ワイヤーロープに比べて熱や摩耗に強いため、高熱物や特殊な作業に用いられます。

本体の重量が重たいため作業効率は低く、頻繁に掛け外しする用途には向いていません。

連結金具(吊り金具)

連結金具は、玉掛け用具と荷物を連結したり玉掛け用具同士の連結に用いる金属製の道具です。スリングと同様に使用荷重や強度が種類によって異なります。

シャックル


シャックルは、ワイヤーロープとともに使用されます。U字型で輪っかの部分にワイヤーを掛けてボルト・ナットなどの部品で固定することで、荷物を連結させます。多種多様なスリングの掛け方に対応できる万能型の連結金具です。また、掛けるワイヤーの本数で、ストレート型とバウ型を使い分けて利用されています。

シャックルの種類についてはこちらをご覧ください。

フック


フックは、スリングや吊り荷に引っ掛けて連結する金具で、頻繁に取り外し作業を行う場合に使用されます。安全のため玉掛け作業では、スリングが外れないようにバネ金具が付いているフックが推奨されています。

リング


リングはシンプルな輪っか状の金具で、スリングやフックを引っ掛けて使用されます。複数のスリングをまとめて取り付けてクレーンのフックに直接かけるという使用方法も可能です。その場合は、クレーンのフックの厚みにリングが引っ掛けられるかを確認してから購入してください。

円形の金具は「リング」、楕円形の金具は「リンク」と呼ばれています。リングの方が毎回荷重がかかる場所が変わるので、長期的に使用できます。クレーンフックには、楕円形のリンクの方が上下が分かりやすく使いやすいという利点もあります。

クランプ


クランプは、鉄板や石材、コンクリートなどの重量物を挟んで、荷物を移動させる金具です。特殊な構造で荷物の重さが増すほど、クランプの摩擦力が大きくなり強く挟むことができます。

引っ掛ける場所がない荷物も扱うことができ、重量物を運ぶ際にも安全性が高いため、建設現場や土木、運輸、造船などの分野で広く使用されています。

アイボルト(アイナット)


アイボルトは、荷物にフックなどを引っ掛けることができるように予め取り付けておくねじ式のリングです。

機械装置や部品などを移動する場合に利用されています。コンクリートなどに直接吊り具を掛けると、欠けてしまう恐れがあるため、別途で部品を付けて移動させる方法が利用されています。

ハッカー

ハッカーは、鉄板などの荷物が水平になるように爪を引っ掛けて用いる吊り金具です。一般的にハッカーには、ワイヤーロープを取り付けて使用されます。必ず偶数のハッカーを使用して、バランスを保った状態で持ち上げてください。

吊り天秤


吊り天秤は、長尺物をバランスよく吊り上げたり、スリングを垂直に吊り上げて荷物に傷が付かないようにする際に使用されています。

多数の吊りピースが付いているものは、吊り位置を選択できるため様々なサイズの荷物に合わせて使用することができます。

モッコ(ネットスリング)

小型の荷物を多数吊り上げる際に使用されるネット状の吊り用具です。ワイヤーロープ製のワイヤーモッコは、鋼鉄製で丈夫ですので建設、土木、レッカー業などに広く使用されています。しかし傷つきやすい荷物には向いておらず錆びに弱いといった欠点もあります。

繊維スリング製のベルトロープモッコは、ワイヤモッコに強度は劣るものの、軽量で荷物を傷つけにくいため扱いやすいといった利点があります。収納する際にも場所を取りません。

モッコの中に化繊シートを敷いて細かい土砂、雪、海産物などを吊り上げるという用途でも使用されます。しかし鋭利なものなどを無造作に入れると、破れてしまう可能性もありますので、注意してください。

玉掛け保護具

玉掛け保護具は、「当てもの」や「角あて」と呼ばれ、角ばった荷物を吊り下げる際に玉掛け用具や荷物を保護するクッションの役割で使用されています。

素材は、ゴム、鋼鉄、アルミなどからできているものが多く用途によって使い分けることができます。高い位置から落下してしまうと危険ですので、正しく使用して落下しないように注意してください。

その他の玉掛け用具

スリングや連結金具のほかにも、補助的に使用される玉掛け用具がありますので、必要に合わせてお選びください。

サルカン

サルカンは、ワイヤーロープの撚りが戻ろうとする力などで生じる回転を防止する役割を果たします。両端が輪っか(アイ)型になっていて、ワイヤーロープを通して連結させて使用します。

チェーンブロック

チェーンブロックは、吊り荷のバランスを調整するために使用される玉掛け用具です。吊り荷が傾いたまま作業をしていると、荷物が滑って落下事故に繋がったり、スリングに過剰な張力が働き破断する恐れがあります。そのため、スリングと荷物の間にチェーンブロックを入れてバランスが取れる長さまで調節して使用されます、

まくら、うま、歯止め(ストッパー)

まくら、うまと呼ばれるストッパーは、着地したときに転がる可能性がある荷物に対して、2本1組で荷物の安定を保つために使用されます。木の角材が用いられることが多いですが、形鋼やコンクリート角が使用されることもあります。

玉掛けまとめ

重たい荷物が落下すると大きな事故に繋がるため、玉掛け作業は正しい知識を持って行う必要があります。玉掛けのための用具も種類がさまざまありますので、用途に合わせて安全に作業を行ってください。

トラデポでは、玉掛けに必要なスリングや連結金具などを多数取り扱いしておりますので、お気軽にお問い合わせください。