シャックルの種類と選び方・JIS規格を基準に見分けよう
シャックルは、玉掛け作業に使用する金属製の吊り金具です。クレーンで重量物を持ち上げ移動させる用途で、ワイヤーロープやチェーンと組み合わせて使用されています。重量のある吊り荷をつなぎますので、安全に配慮した十分な強度が必要となります。また、取り付けや取り外しの作業性を上げるためにも最適なシャックルの選定が不可欠ですので、以下の選び方を購入時の参考にしてください。
シャックルを見分けるポイント
シャックルには、形状や素材、サイズの異なる製品が様々あります。JIS規格でも基準が定められていますので、購入時の名称や製品へ刻印された文字から、耐荷重や形状を判断する事が可能です。
用途に合っていないシャックルを利用すると、破損につながり非常に危険ですので、運ぶ荷物の大きさや重量を確認し、ぴったりな製品を利用してください。
使用荷重
シャックルを利用する上で一番重要となるのは、やはりどれだけの重さに耐えられるかを判断する「使用荷重(耐荷重)」となります。規定の重量を超えて使用すると、シャックル自体が破損して、重量物が落下する恐れがありますので、非常に危険です。使用荷重はシャックルごとに定められていますので、運ぶ荷物の重量を考慮して選択してください。
またここで定められている使用荷重は、縦方向に荷重をかけることを前提としているため、横方向には荷重を加えないように注意してください。
形状
スリングにワイヤーロープを1本でかける「1本吊り」の場合か、「2本吊り」「3本吊り」などの多重吊りの場合で、ストレート型とバウ型を使い分けます。また、取り外しの頻度によって、「ねじ込みタイプ」と「ボルト・ナットタイプ」を使い分けてください。
ストレート型
1本吊りの場合は、ストレート型のシャックルが利用されています。クラウン部分が細く、バウ型と比べて質量が軽いのが特徴です。また比較的価格も安くなります。
バウ型
バウ型のシャックルは、クラウン部分が大きく膨らんでいて複数のワイヤーロープをかけても重ならないようになっています。ワイヤーロープをかける「ふところ」部分が膨らんでいることから、バウ型のシャックルは「オタフク」とも呼ばれています。
同じ使用荷重のストレート型よりも長さや質量が大きく、値段も高額になりますが、ワイヤーロープ同士が重なると擦れ合って、ワイヤーロープが損傷する危険性がありますので、多重吊りの場合は必ずバウ型をご利用ください。
ねじ込みタイプ(捻じ込みタイプ)
ねじ込みタイプのシャックルは、ボルト(ピン)のつまみ部分に穴が開いていて、棒を差し込んで増し締めや取り外しをすることができます。ワイヤーロープの取り外しが多い場合には、ねじ込みタイプを利用することで作業性が上がります。
ボルト・ナットタイプ
ボルト・ナットタイプのシャックルは、割りピンがナットの抜け落ちを防ぐため、振動が伝わるような場合であっても強力に締まります。取り外しの作業性は下がりますので、頻度が少ない場合にはボルト・ナットタイプがおすすめです。
サイズ・重量重量
同じ使用荷重でも、サイズや単重が異なるシャックルが多数ありますので、連結するリングやチェーンの大きさに合わせて選択してください。一般的にサイズが小さくなるほど高強度となります。
強力長シャックル
ふところ部分が長いロングタイプは、「長シャコ」とも呼ばれています。リーチ部分が長く作業性が高いため、矢板の引き抜き作業など多くの現場で利用されています。
軽量シャックル
製造業の現場では、大きな使用荷重かつ軽量のシャックルが求められています。軽量タイプは、径が細いため質量が軽く扱いやすいことから、安全性も向上します。
超強力シャックル
超強力シャックルは、高強度で耐摩耗性に優れたシャックルです。素材は構造用合鋼が素材として使用され、さらに熱処理が施されていることで、強度が高められた高品質の製品です。同程度の使用荷重である他タイプに比べて、サイズが小さくなります。
素材・表面加工
シャックルは鉄・アルミ・ステンレスなどの金属素材で製造されています。素材や施されている表面処理によって性質が異なりますので、用途や予算に合わせてお選びください。
鉄
鉄は強度が高いことが特徴で、熱処理されるとさらに強度が増し摩耗にも強くなります。比較的安く手に入るため、多くの現場で使用されています。
しかし錆びやすいため、表面処理を施していない状態では劣化して強度も落ちます。湿気の多い現場などでは、メッキや塗装がされているものをお選びください。
ステンレス
ステンレスは鉄にクロムやニッケルを含有させて防錆性を向上させた素材で、雨に濡れる屋外や湿度が高い場所でも錆びにくく、強度を保つことが可能です。アルカリ性や酸性など各種化学薬品に対しても耐性があります。しかし、海の近くで利用する場合には、ステンレスの特徴である不働態膜が破壊されてしまい腐食が進んでしまいますので、表面処理が必要になります。
価格は、鉄製品よりも高額になる傾向があります。
アルミ
強度は鉄やステンレスと比較して、強度は劣りますが軽量で使い勝手が良く、持ち運びをするような用途で重宝されています。
生地
表面処理をしていない商品は、「生地」や「黒」などと表現され、金属の表面に塗装やメッキを施さずにそのまま利用している製品です。導入コストは抑えられますが、そのままの鉄の表面はサビやすく作業中に手が汚れるなどのデメリットもあります。
錆びやすい場所での利用の場合には、表面処理を施した素材、もしくはステンレス・アルミなどがおすすめです。
めっき
めっき加工によって金属の表面が水や酸素に触れないようにすることで、錆びや腐食が発生しにくくなります。
めっきの1種類である「溶融亜鉛めっき」は、製品を溶かした亜鉛に浸して亜鉛の皮膜を作っているため「ドブ」や「天ぷらめっき」とも呼ばれています。光沢があり剥がれにくい、「ユニクロ」「クロメート」「電気亜鉛めっき」などの電気めっきもあります。
塗装
めっきと同様に表面を保護して錆びに強くする目的で使用されますが、カラーバリエーションが多く、好みの色を付けることができるのが特徴です。目的に合わせて色をかえることで、建築物などの空間の認識に役立ちます。
JIS規格で定められているシャックル
JIS規格のシャックルは、国に定められた規格品です。規格品であれば、使用荷重や大きさが共通ですので、製造しているメーカーが異なっていても、同じ基準で使用することができます。また、JIS規格には、グレードが設定されておりM級、S級、T級、V級に分かれています。
<表1. JIS規格シャックルの使用荷重>
刻印によるシャックルの見分け方
JIS規格品には刻印が刻まれていて、使用荷重や等級を確認することができます。今利用されている製品と同様のものをお探しの場合は、参考にしてください。
使用荷重は、「WLL」の数字で確認できますが、以前は「SWL」で表記されていましたので、製造年に合わせてご確認ください。
シャックルの選び方まとめ
シャックルには、使用方法や使用荷重、サイズ、素材などの異なる製品がたくさんあります。JIS規格に基づいて判断すると、製造元が異なっていても安心して同じ基準で選定できます。
トラデポでは高品質なシャックル製品を多数取り揃えておりますので、お客様の玉掛け作業に最適な製品についてお気軽にお問合せください。